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#10おすすめ漫画 寄生獣~正義とは何か~

 なお悲しいことに人類は争いを続けています。この地球規模で考えると、人類は環境を破壊し、様々な生き物を絶滅へと追いやりました。人類は本当に地球のために必要なのでしょうか。人類こそが地球へ「寄生している獣」なのではないのでしょうか。そんなことを考えさせてくれる漫画を今回紹介します。

 

 

寄生獣

 

 

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基本情報

 

 

〇作者 岩田 均(いわた ひろし)

 

〇出版社 講談社

 

〇掲載誌 モーニングオープン増刊号月間アフタヌーン

 

〇連載期間 1988年~1995年

 

〇巻数 10巻

 

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ジャンル

 

 SF×スリラー×哲学

 

 確認生命体と人類との闘いを描いた漫画です。この未確認生命体が人類に寄生したり、捕食したりするシーンが印象的ですが、この漫画の根底は「哲学」です。人類を第三者目線で解析し、人類がどれほど地球という舞台で好き勝手やってきたかを改めて感じることができます。岩田均先生は、その深いテーマを10巻という絶妙な長さで掘り下げています。

 

 

 

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あらすじ

 

 

 る日突然、空から人知れず多数の未確認生命体が飛来します。その生物は人類の頭に侵入し脳を含めた頭部全体に置き換わる形で寄生し全身を支配、他の人間を捕食する性質を有していました。自在に変形する頭部はもはや人間のそれではなく、刃物のように鋭利になったり、鞭のようにしなやかになったりなり、数多くの人類が犠牲となりました。

 高校生であった泉新一は1匹の寄生生物に襲われますが、何とか頭部を死守します。寄生生物は右腕ののみに寄生し、右手に置き換わってしまいました。一方その他の寄生生物は尋常じゃない速度で人間社会を学習し、溶け込もうとしていました。生き物の種としての人類対寄生生物の闘いはひっそりと幕を開けるのでした。新一はこの戦いに否応なしに巻き込まれていくのです。

 

 

登場人物

 

 

 泉 新一(いずみ しんいち)

 

 

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 本作の主人公。ごく平凡な高校生でしたが、右手に宿った寄生生物「ミギー」により数奇な運命を辿ることになります。性格は至って普通の高校生で、ヒロインに片思いをしたり、不良に絡まれたりし震えるなど、どこにでもいる少年です。しかし、寄生生物を探知できる能力、探知される能力を有しているせいで、人類と寄生生物の中間者としての立ち位置になってしまいます。このことが原因で物語終盤まで苦しめられることになります。また、その物語中に様々な経験を通して、命への価値観や生死観について紆余曲折しながら考え、成長していきます。

 

 

 ミギー

 

 

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 新一に寄生した寄生生物。脳を乗っ取ろうとしましたが失敗し、 そのまま右腕に寄生しました。(右手にいるから「ミギー」です)寄生当初は感情に乏しく、宿主と自分以外の生死には極めて冷淡かつ淡白で、敵に襲われた時も周囲の人間を盾にする戦略を練るなど人間社会の常識とはかけ離れた考えをもっていました。しかしその後は新一と共存関係ということもあり、徐々に感情を理解し互いを信頼できる存在へなっていきます。性格は好奇心旺盛で読書家。この地球のことや人類のことについて常に学び続けています。

 

 

 田村 良子(たむら りょうこ)/田村 玲子(たむら れいこ)

 

 

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 新一の通う高校教師。しかし実際は「田村」を乗っ取った寄生生物です。登場する寄生生物の中でも高い知能を持ち合わせています。人間のように「笑う」という感情を身に付けています。研究熱心な性格で、寄生生物同士の繁殖は可能か確かめるために、同じく人間に寄生した仲間と妊娠し、実験目的で出産までしています。戦いの最中に我が子が危険な目に合いそうなのを目の当たりにし、「母性」を目覚めさせるなど、他の寄生生物とは一線を画す存在です。後にラスボス的存在の「後藤」を生み出す人物でもあります。

 

 

 後藤

 

 

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 田村玲子が作り出した、寄生生物の集合体。本作におけるラスボス的存在です。通常は人間1人に対して寄生できるのは1匹まででしたが、彼の場合は5匹の寄生生物を有しています。体の大半を変化させることが可能で、様々な人物に返送したり、画像のように体中を筋肉のような膜で覆うことも可能です。人類を滅ぼすことを目的とし、そのことに強い使命感を持ち合わせています。人類に対して憎悪はなくとも、「地球を守る」という正義を掲げており、その思想に賛同する人類を束ねる存在でもあります。

 

 

寄生獣は傑作漫画である!

 

 「人類が未確認生命体と戦う」「主人公の体が異形化する」など、今作以降の漫画的表現に多大な影響を与えた「寄生獣」。しかし、その内容も当然魅力的です。

 

 

① 圧倒的な読みやすさ

 

 

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 「読むと止まらなくなる」この言葉が、本当に当てはまる漫画です。「人類の存在意義」「生死観」など、難しいテーマを扱っています。しかし、寄生獣は「新一・ミギーvs敵寄生生物」という流れから「新一vsミギー」の討論という二段構成で物語が展開されます。派手な戦闘シーンばかりに目が行きがちですが、新一・ミギーの討論にも「人類・寄生生物」のそれぞれの価値観を語り合う流れこそが、物語を明確にしてくれます。

 

 

② 無駄がない展開

 

 

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物語の最終舞台は市役所

 

 

 寄生生物の起源について語られることはありません。寄生獣の舞台は日本ですが、この寄生生物による惨劇は世界各地で起こっているのかも語られません。この「新一と寄生生物」の話のみで展開されます。とても分かりやすく、内容がスッと頭に入ってきます。複雑なルール設定も細かい書き込みも一切ありません。故に、物語の今、何が起こっているのかがとても分かりやすいです。これは歴代の傑作漫画に共通して言えることだと思います。

 

 

③ 新一とミギーの友情

 

 

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 新一は物語序盤、生き物を大切にするごく普通の少年でした。ミギーは人類に興味がない冷淡な寄生生物でした。その二人が共存することでお互いを信頼し合える存在に成長します。画像は寄生獣きっての名言と挙げられるシーンです。自分と宿主以外興味がなかった存在から、認め合える存在に代わったことが印象付けられるシーンです。このミギーの微笑みが見れるまで、2人は様々な悲惨な経験をします。それを乗り越えられた後にこの感動があります。

 

 

まとめ

 

 

 かがだったでしょうか。漫画家が好きな漫画として有名になり、大学教授や心理学者も絶賛した今作。深いテーマを手に取って味わってみてください。